コラム

問われるのは、量ではない

成長社会を生きてきた中高年にすれば、成長や発展や拡大こそが是であり、その逆はあまり意識しない。考えてみれば当然である。成長社会しか経験していないのだから。しかし、だからこそ創造をしてゆく必要がある。日本の現実は、高齢者は増えるが全体人口は減り、巷に物は溢れ、どこに行っても店舗が乱立し、空家の数は800万戸を超えてしまった。需要のあるなしに関係なく、怒涛のように供給し続けている結果である。

全世界の人口72億人の内、衣食住足りてかつ、食べ残す生活をしている人の数は約5億人、日本人全員がこの中に入る。我々は、空家になってしまう建築物のために日本が輸入する南洋材の伐採により、どれ程の森林破壊が起きているか認識する必要がある。「量の先に質があり、質の前提に量が存在する」との観点から言えば、日本はすでに「質の国」になっている。成長ではなく成熟、発展ではなく安定、拡大ではなく縮小なのである。